vol.1 説得

この道具ならどこに行ってもきっと役に立つ!
「フライパンに・・・それから無限ピッチャー、これがあれば料理ができる~♪」
Sky Blueに作ってもらった料理道具を眺めながら、バッグパックの中にぎゅうぎゅうと詰め込んだ
"きっとこれから先も役に立ってくれる"
そう信じて、私はここを出る準備にとりかかっていた。 既に移住したという人も多いと聞く、新しい世界への旅立ち
頑張ってきた私の全てを捨てて行くんだから、不安な事はいっぱいあるけど
新しい世界に関する資料や情報を、既に移住した知り合いに教えてもらえたし
自分でもある程度の事は調べておいた。やっぱり自分の目で確かめたかったしね・・・
そう思いながらほとんどの荷物を詰め終わった時一番重要な物を忘れていた事に気づいた
「この地図入れておかないと!」
「本当に行くのか?」
声が聞こえたのか厩舎から戻ってきたFlimeが、開いているドアから顔を出して声をかけてきた
「うん。ここにいても、もう料理が役に立たないって思っちゃったからね」
私は荷物を整理する手を緩めないまま返事をして、最後に地図を入れてバッグの蓋をパチンと閉じた。
「これでばっちり!」
その間にFlimeはやれやれと言わんばかりに短く息を吐き、食堂の方へ歩いて行った。
ここBritanniaではずいぶん前からCookingに対する風当たりが厳しいものになっていて
ここ最近は趣味のスキルだとかお遊びスキルとしか見てもらえない現実になっていた。
ずっと長い間パンすら焼いてないGM Chefの私だけど、私の腕は鈍ってはいない
その事を確認する為に私はここを出るんだ・・・ 初めてAsukaのBritanniaに降り立った時、私は剣士だった。
何も知らない場所、何もできない自分、でも全てが新鮮で毎日が楽しかった。
いつの頃からか焚き火をしながら、その火でお肉を焼いて自給自足の生活を送る様になっていき
動物調教師やバード、お宝探しに生産、いろんな事に手を出せる様になった。
バードが誕生してからは出番がぐっと減ったけど、料理の修業は忘れなかったし
毎日こつこつ修行していたからGM Chefになれた!そう思ってる。
Keliaが釣った魚を捌いて焼き魚にするのが、あの頃の日課だった・・・
「じゃあ、最後の晩餐といこうか~」
明朝私はここを出発するから、今日がここでの最後の食事
こうやって11人揃って食べるのはもう無いんだ、と思いながらいつもの様に料理を作る。
「留守の間は任せておいて!」
生産系の道を歩んだSky BlueとClover、それにKeliaの顔は満面の笑顔。
「まさか早く出て行けって事!?」
「それを言ったら、後で3人共うにこに食わせるから心配ないって」
ちょっと物騒な事を言うのは、私と同じ名前の動物調教師Kululu
またやってる、という顔をして周りの4人を見ているPlanetとWater Lily
「最後だからお得意のリュートが聴きたいな~」
「おっけー任せて!」
辛い修行を乗り越えて伝説のバードになった、メインキャラのKulune
顔色一つ変えず、でも何かを考えている様な伝説の槍騎士Flime
「みんなありがとー!ひとまず今日でお別れだけど、またいつか会えるといいね」
この時はまだ、完全にここを離れようなんて思ってなかったなぁと今になって思う。
いつかここに帰ってこれるんじゃないかって、心のどこかでそう・・・
静かなYewの森に朝がきた。今日もいい天気!
起こさない様、物音を立てない様、静かに起き出してこそこそと準備を始める。
さてと、出発しなきゃ。昨日まとめた荷物を肩にかけて玄関のドアを開け、最初の1歩を踏み出した時
「いざ大航海時代の世界へ、Let's Go!」
これは私の声じゃない。寝てる9人を起こさない為にこっそり準備していたから、声なんて出せない状況。
何で後ろから声が・・・と思いながら振り向いて見ると、さっきまで寝ていたはずの9人がこっちを見ていた。
「そーいえば、Flimeはどーしたの?」
「それがさー明け方こっそり起き出して、どっかに出かけたっきり戻ってきてないんだよね」
「そうそう、らまのLilimも置きっぱなしだし」
どこに行くのも一緒で、いつも1人と1匹揃って帰って来ていたのに・・・
「きっとデーモン相手に早朝練習でもやってんじゃない?」
Flimeなら十分あり得る事。今までも何度かこっそり出かけてたの知ってるし!
「ねーさんなら・・・」
「はいはい、Flimeの事は気にせずに出かけなよー」
「じゃあFlimeの事何か分かったら教えてね?」
「その前に住所が分からないんだけど・・・」
「ごめん忘れてた!場所が決まったらこっちから連絡するから、おすたのMayの世話もお願い~」
「もちろん!気をつけてねー」
9人の姿が見えなくなるまで、思いっきり手を振りながら街道へ向かって歩き出した。
「とりあえずはこの地図を持ってれば大丈夫よね~・・・って地図が無い!?」
昨日確かに入れたはずなのに、何で無いの?あれが無いといくら方向音痴じゃなくても迷うよ…。
入れた場所を間違ったんじゃないか、寝ぼけて入れ替えたんじゃないか?もしかして家で落としてきた!?
「探し物はこれか?」
聞き慣れた声に、必死でバッグの中を探していた私は思わず顔を上げてその方向を見た。
「Flime、ちょっと何するのよー!」
確かに私が昨日入れたはずの地図をひらひらさせながら向かってくるFlime
「まったくどういうつもり?これ探して必死になってたっていうのに!」
「悪いけど、1人で行かせるつもりは無くてね。一緒に行こうかと思うんだけど?」
「はい!?」
「だーかーらー、大航海時代に乗り込むんだったら一緒に連れてってくれって事!」
Flimeは深くため息をついて、私が座り込んでいた丸太の隣に腰を下ろした。
ふらいむのいつもの格好じゃない。ううん、似てるけどでも少し違う。
ふらいむお気に入りの真紅の槍持ってない!もちろんLilimもいない。
「・・・どういうつもり?」
「別に、どうって訳じゃないけど。1人よりは2人の方がいいだろうと思っただけ」
「他の…9人は知ってるの?」
「勿論」
「知らなかったの私だけ!?もうみんな…まったく…」
「なんだ、何か不満?」
「知ってるなら言ってくれればよかったのに、って思っただけだから」
「言ったら、普通止めるだろ?」
「まあね・・・」
そういう訳で私だけではなく、Flimeも一緒に大航海時代へ行く事に。
1人より2人、とFlimeが思っていたのは彼女が誕生した時既に5人もいたからじゃないかと思う
私が産まれた時は1人だったし、そんな事考えた事もなかったなぁなんて思いながら
私は1人でも大丈夫だと思って(知り合いが既にいるから)準備を進めていたけど確かに1人より2人
でも伝説の槍騎士の称号を捨てて、らまのLilimとお別れしてもよかったのか私は聞かなかった
私もFlimeも一度言い出したら聞かない性格。つまり頑固なんだよね、2人共・・・
しかしLilimの説得どうやったんだろ?
「ふらいむがらま語を知っているのか」それとも「Lilimが人間の言葉を理解できるのか」
出発直後に私はいきなり変な疑問にぶつかってしまった