バレンタイン・パーティー 「バレンタインデーってどんなものなんだろ・・・?」 Kululuが久しぶりに帰ったアパルタメントで荷物の整理をしている時、執事のマリアがぽつりと言った一言。それが今回の物語の始まり。 「女の子が男の子にチョコをあげる日だよ!」 そう言ったのはアパルタメントに待機している副官のkululu。 「別にチョコじゃなくてもいいけど、何か気持ちを伝える日だと思えばいいんじゃない?」 荷物を抱えたリディアがそう言うとエレナも小さな頭をなでながら笑顔で2人に話しかけた。 「どうせならみんな集まって、にぎやかなパーティーにしたいわよねぇ〜?」 「うん!」 顔を見合わせた2人はどちらからともなく満面の笑みでそう答えた。 マリアとkululu、同年代の2人は仕事の合間に一緒に遊んでいると・・・そう聞いている。 主が留守の間にティーセットとお菓子を出して紅茶を入れたりと、多少いたずらもするお年頃の様だが・・・ それよりも2人の気が合った事が、Kululuも安心して出かけられるというもの。 ある程度片付けも終わり、5人分のお茶とお菓子を全員で用意して一息ついた時 「普段頑張って留守番してくれてるからお土産買ってきたよ!」 そう言ってKululuが出したのは、マリア用の食器セットだった。 副官3人の食器セットはそれぞれ雇用時に用意したのだが、マリアが来た時はおちおち準備のできないまま出航する事になっていた。 (今まではkululuが自分の分を貸す事もあれば、主を含めた留守にしている人の分を使っていた事もあるらしい) 「私・・・にですか?」 「そうだよー!私もここに来た時食器セット買ってもらったんだー」 隣に座ったkululuが驚いた様子のマリアに早く開ける様せかしているのだが、マリアは驚いた表情を隠しきれず主に聞き返した。 「副官の方ならともかく、執事にいいんですか・・・?」 「マリアちゃんもこの家の一員だからね〜」 紅茶を飲みながら、エレナが言った言葉にKululuも付け足す。 「ここにいる限り執事も副官も関係無いよ?みんなが家族みたいなものだからねー」 それを聞いて安心したのか、マリアもようやく笑みを取り戻し 「じゃあ開けてみます!」 と箱の包装をはがし始めた。 プレートのふちに小さなオレンジ色の花がついたかわいらしい食器に、受け取ったマリアだけでなくkululuも目を輝かせている。 「これかわいいー!」 「Kululuさんありがとうございますっ!大事にしますね!」 貰ったばかりのお皿とコップをながめつつ、思わず箱をつぶしそうになるぐらい喜んだ様子を見て 「買ってきてよかったー」 と他2人の顔を見ながら、頷いたKululuだったがふと何かを思い出したかの様に手を叩いた。 「あ、そうそう・・・2/14にみんなでケーキ作らない?」 きょとんとしている小さな2人の顔を見ながら、リディアとエレナが続けた。 「さっき言ってたバレンタイン・パーティー、ここでやらないかなって思っているんだけどどう?」 「マリアちゃんの食器お披露目も兼ねてね〜」 おいしいものが食べられる、と分かれば反対する人間はここにはいない。 各自それぞれ思い思いの料理を作って持ち寄る、という事になり数日後の2/14を待つ事になった。 ------------------------------------------------------------ Kululuは得意な調理の腕を生かして、メインとなる料理を沢山用意していた。 「ガーリックが足りないからマラガ行ってくる〜」 どうやらいつも作り慣れている鶏丸焼きニンニク詰めを作る気らしいが・・・洋上で調理するとなると話は別だ。 「また出火しますよー?」 「消火スキル上げたいから、むしろ燃えて!」 どうやら船から出火する事は想定済みどころか、内心期待している様だ。 リディアとエレナはKululuの手伝いとして船に乗り込んだが、2人はとある紅茶を用意欲しいとKululuから聞いていた。 マリアが昔飲んだという、彼女の母親がお気に入りだったベルガモットフレーバーの紅茶。 ベルガモットはフランスに所属している or 過去に所属していた者しか購入する事ができない。 若干苦労するかと思われたがそこはKululuが抜かりなく根回しをしていた。 2人がボルドーに着くと懐かしい紅い髪が見えた。 「おう、2人共久しぶりだな!」 この口調を聞くのも久しぶりなのだが、リディアとエレナはきちんと覚えていた。 「ねーさんじゃないですか!」 「久しぶりにKululuから連絡があったと思えば、パーティーの準備だと聞いたからな。手伝わない訳にはいかないだろう?」 「フライムさん助かります〜」 ねーさんがフランス所属でよかったー!とKululuは思っていた。 そうでなければ他人に手伝いを頼む事になり、それはさすがにマリアも心苦しいだろうとの配慮からだった。 「これぐらいあれば十分だな」 そう言ってベルガモットを買い込んだ後、フライムはマルセイユに帰っていった 「次の出番はいつになるか分からないが・・・Kululuを頼んだぞ?」 リディアとエレナは両手にベルガモットを抱えたまま 「もちろんです!」 と返事をした。 家に残ったマリアは主から頼まれた飾りつけに勤しんでいた。 後片付けが大変だから・・・とテーブル周りだけ飾りつけという話になった。 マリアの背が低い事を考慮しての頼み事だったのだが、それを知ってか知らずかマリアは丁寧にテーブルに食器を並べていた。 もちろん主が買ってきた、真新しい自分の食器も一緒に。 ------------------------------------------------------------ そして2/14を迎えた5人は朝から必死に準備を整えていた。 パーティーはランチの少し前からの為、時間的に多少の余裕はあったもののどたばたした家の中でのんびりする訳にもいかない。 各自手が空けば忙しそうな人を手伝いに行き、ようやく一段落したのがパーティー開始予定時刻の1時間前。 「後は丸焼きができあがるのを待つだけ〜」 メインの鶏丸焼きニンニク詰めが焼きあがるまで、5人はそれぞれの椅子についた。 食卓のテーブルにはマリアが頑張って飾り付けた花飾りも置いてある。 パーティーが始まるまで、のんびりといつも通りの談笑を楽しんでいた5人だったが 運ばれてきた丸焼きを見てみんな目が輝く。 誰からともなく「おいしそー!」と言うとそれぞれ好きな量をお皿に盛り早速食べ始めた。 「今日もばっちり焼きあがってるわ〜」 「おいしいです!」 満足そうな表情の4人を見たKululuは椅子を引いてその場に立ち、こう切り出した。 「食べながらでいいので、そのまま聞いててください」 手に持ったナイフとフォークを皿に置き、4人の視線がKululuに集まる。 「私は主って言い方は好きじゃないし、あくまでみんなと同じ立場でいたいんだけど。まずは私からみんなに…」 そう言ってテーブル上に出したのは、特大サイズのバウムクーヘン。 「おちび(kululuの事)もリディアさんもエレナさんも・・・それからマリアもいつもありがとうねー。また1年一緒に頑張ろう!」 4人共軽く頷いた後「もちろんです!」と返事をしたが、出したKululuを含め興味は特大バウムクーヘンに移っていた。 バウムクーヘンを切った後はリディアとエレナの番だ。 「次は私ですね」 リディアが立ち上がるとエレナも一緒に立ち上がった。 「私とエレナさんで用意したのは・・・」 そう言って出したのはフライムに購入を手伝ってもらったベルガモットの紅茶。 「これ・・・は?」 「味が近いかどうか分からないけど、マリアちゃんのお母さんがお気に入りだったって聞いたから〜」 "人を驚かせて、喜ばせる事が好き" この家の主の事はkululuからよく聞いていたが、まさか自分にそれがふりかかるとは思わなかったマリア さすがに感極まってしまい、思わず顔がうつむいてしまった。 「マリア・・・大丈夫?」 首だけ動かして返事をするマリアを見て、隣にいたkululuが声をかけた。 「はい、ハンカチ!」 「・・・ありがとう」 小さな声で返事をしたマリアは必死に涙をこらえて、顔をあげた。 多少赤くなった目をしたままだが、椅子から立ち上がり自分より背の高い3人に向けて言葉を発した。 「えっと・・・ここに来た時、色んな不安がいっぱいで自分でもちゃんとお仕事ができるか分からなかったんです」 ハンカチを握り締めたまま、マリアは続けた。 「でも主のKululuさんは私も他の皆さんと一緒の立場だと言ってくれましたし、その証拠に目の前にある食器セットもいただきました」 マリアは自分の前にある食器セットに視線を落とし、軽く頷いて顔を正面に向け更に続けた。 「それに私の母が好きだった紅茶まで用意してもらって・・・私ここに来てよかったです。本当にありがとうございます!」 そう言った後オレンジの髪が丸焼きのソースにつきそうになるぐらい、深くお辞儀をした。 そして顔を上げたマリアの目に入ったのは「よく頑張ったね!」という表情で拍手をする4人だった。 ------------------------------------------------------------ 「んじゃバウムクーヘン食べようか!」 切ったまま目の前に置いていたので、多少冷めてはいたが温かいベルガモットの紅茶と共にいただいたバウムクーヘンの味は格別だった。 「来年もこうやってみんなでパーティーできるといいわね〜」 エレナの言葉にkululuが反論した。 「来年じゃないよー。記念日ごとだよ!」 バレンタインの日、リスボンにあるとあるアパルタメントの一室 そこは暖かい雰囲気に包まれた、ホームパーティーの会場になっていた。 ------------------------------------------------------------ あとがき パーティーがいいなぁ・・・というシチュエーションは昨夜もやもやしてる時に浮かんだんですよね。 ただメンバーをどうするか?という肝心の中身が全然出なくて唸ってましたorz 唸りながらテキストエディタで書き始めたら、割とすらすら出てきたのにはびっくりしましたが@@; 「紅茶」と言う案は大航海ではチョコレートのお菓子作れない!という苦し紛れの発想から出たネタです。汗 無いものをある様に見せてもいいけど、できれば交易品があるものでどうにかしたいなぁと・・・ リディアさんに言わせた台詞は中の人(私)のバレンタインに対する気持ちなんですよね。 日本でいうバレンタインデーは女性が男性にチョコをあげるのが一般的ですが、私は性別問わず「誰かに気持ちを伝える日」と考えてます。 それの気持ちは「ありがとう」かもしれないし「ごめんね」かもしれないけど 誰かの為に何かする日だと考えれば「バレンタインデーいこーるチョコレート」とこだわる必要なんて無いよなぁーと@@ 私はチョコに限らず自分で食べる方が好きですけどね!w マリアの髪の毛はオレンジ色だし、どうせなら大航海にある柑橘系がいいよなぁ・・・と思いついたのがベルガモット (バレンシアがあるからバレンシアオレンジでもいいかも?と一瞬思ったのは秘密です) 「これって紅茶になるのか!?」とぐぐってみたらWikipediaに以下の説明が。 "代表的なフレーバーティーの1つであるアールグレイはベルガモットの精油で紅茶を着香することで作られる" もうこれは使えと言わんばかりの材料@@ ベルガモットはボルドーで投資した事のある人しか買えないんですが、それならねーさんに頼めるひゃっほい!と浮かんだので ログインこそしてないもののねーさんに出てきてもらいました。ご苦労様。汗